スタッフの声(日本動物高度医療センター)スタッフの声(日本動物高度医療センター)

診療科トピックス

​​​​JARMeCでは365日、各科ごとに様々な症例に向きあっています。
ここでは各科ごとの症例や取り組みの一例を紹介します。

​​循環器・呼吸器科

​​​​Cardiology/Respiratory Medicine Department

ホルター心電計を用いた不整脈診断

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図1 ホルスター心電計

はじめに

 日々の診療の中で遭遇する機会の多い心疾患に、僧帽弁閉鎖不全症(MI)があります。X線検査や心エコー検査はこの病態を把握するために実施する機会が多いと思いますが、心電図検査( ECG)を用いて病態を判断することも重要であり、MIと不整脈の関連性がいくつか報告されています。そのひとつに完全房室ブロックがあり、MIによる刺激伝導系の変化が原因のひとつとされています。また、MIにより生じた心房細動発症例の生存期間中央値は小型犬で1.1か月との報告もなされています。
 このように、心疾患を評価するうえでECGは重要な検査であり、不整脈の診断にあたっては徐脈性/頻脈性不整脈なのか、上室性/心室性不整脈なのかを判断するために欠かせません。しかし、検査中に虚脱などの症状が必ずしも発症するとは限らないため、確定診断に至らないことや、院内の検査では飼い主様の訴える症状と不整脈の関連の証明が困難なことが多いと思われます。そこで、当センターでは24時間心電図検査であるホルター心電計「テジタルクイックコーダQR2500:フクダエム・イー工業株式会社」(図1)を用い、解析診断しています。

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図2 ホルスター心電図検査の様子

 ホルター心電図検査は、小型で軽量なホルター記録器を専用ジャケットで背負って(図2)普段の生活の中で生じた不整脈を検出する検査です。3日間の生活の様子を飼い主様にモ二ター(記録)してもらい、症状発生時刻と不整脈の関連を解析します。徐脈性不整脈である洞不全症候群や房室プロック症例、ボクサー心筋症として知られる不整脈源性右室心筋症を疑う症例に対して検査を提案しています。今回は脳神経疾患を疑い紹介された症例において徐脈性不整脈が検出され、不整脈に対する治療が奏功した症例をご紹介します。

症例:てんかん発作の悪化を疑った症例に対し
       ホルター心電図検査にて洞不全症候群と診断した犬の一例

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図4 約8秒間の心停止を確認したホルター心電図検査

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図5 ペースメーカ^埋め込み後のX線検査

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図3 来院時に確認された洞性徐脈

 M・シュナウザー、避妊雌、10歳。5年前より月2~3回のてんかん発作を認めていたが、3週間前から活動時の失神もみられるようになり紹介医を受診。ECGと心エコー検査で異常が検出されなかったことから、てんかん発作の精査目的で当センター脳神経科に紹介されました。神経学的検査では異常所見はなかったものの、頭蓋内疾患は完全に否定できないことからMRI検査が検討されましたが、身体検査時に徐脈性不整脈(50bpm)を認めたため循環器科で精査しました。心エコー検査では明らかな機能異常を示唆する所見はなく、ECGでも洞性徐脈を認めたものの失神の原因となる心停止は認められませんでした (図3)。失神の頻度が増えていたことから、心疾患除外のため即日ホルター心電図検査を実施しました。失神は最終日の3日目のみ認められ、発症時に約8秒の心停止(図4)が確認されたことから洞不全症候群と診断しました。徐脈性不整脈の根治治療として ペースメーカー植込み術を実施したところ(図5)、失神は消失し、活動性の改善が認められました。

おわりに

  てんかん発作や失神発作発症時は、飼い主様による正確な状況把握が困難なことが多いと考えられます。特に本症例のような洞不全症候群は、ほば正常な洞調律で拍動している時間帯もあることから心停止といった異常を検出することが難しく、ホルター心電図検査が疾患の確定・除外に重要です。  循環器・呼吸器科は、他診療科の症例でも循環器疾患の既往がある場合や呼吸器疾患を併発している場合には連携して診療を行っているほか、CT検査やMRI検査等の麻酔処置を必要とする症例は高齢であることが多いため、心工コー検査などで麻酔前評価を実施しています。失神や虚脱等の症状は脳神経疾患や腹腔内腫瘍の破裂による腫瘍性疾患でも引き起こされることや、胸水貯留は低蛋白血症といった消化器・泌尿器疾患等に続発することもあるため、心疾患が疑われる症例でも多角的に診断を進め、各診療科と連携し責任病変の検討を行っています。